特攻隊員のモチベ

(*9ヶ月前のブログ記事が公開されずに残っていた。)

 

福岡に来たので、太刀洗飛行場跡を訪ねてみた。

f:id:kohshikuwahara1218:20170119121227p:plain

戦中は東洋一の飛行場とも謳われた日本陸軍の航空基地があり、ここから沖縄沖等に多くの若者が飛び立って、戦死していった。

 

f:id:kohshikuwahara1218:20170119121137p:plain

特攻のマニュアル。めちゃ雑に見えるんだが、万が一敵に捕まることも考えてシンプルにしてあるのかもしれない。

僕のお祖母ちゃんのお兄さん、所謂大叔父さんはこの場所から特攻に行って、死んだらしい。

f:id:kohshikuwahara1218:20170119121102p:plain

見つけた。 

「ただ心中にあるは敵艦必沈の闘志のみ、豊の満足この上なし。」

この大叔父さん、実は僕とほぼ一緒の場所に生まれて、同じ高校に通っている。

あんなド田舎に生まれ育った22歳の青年が、こんな風に考える至った背景が知りたかった。

現地で買ったこの本を読んでみる。

重爆特攻「さくら弾」機―日本陸軍の幻の航空作戦 (光人社NF文庫) | 林 えいだい |本 | 通販 | Amazon

 

この本によると、どうやら、大叔父さんがのせられたのは、さくら弾機というやつで、ドイツで開発された高性能爆弾を載せた、陸軍の秘密兵器のような位置付けだったらしい。

f:id:kohshikuwahara1218:20170119121205p:plain

しかし、これが所謂不良品で、イワクつきの代物だったっぽい。

・作戦実行の前に、訓練中の事故で二機が墜落。乗組員死亡。(原因追及されず。)

・機体重量に対し、爆弾の重量が重すぎ、運動性能が著しく悪い(敵機に

見つかると逃げられない。)

・軽量化するために、機銃などの装備ゼロ。鉄の代わりにベニヤが貼ってある(反撃できない、弾が当たるとほぼ死ぬ)

・かといって、護衛の機体も付けてもらえない。

・作戦実行の前夜に、一機が放火され、作戦実行不可に。(元朝鮮籍の搭乗員がアリバイあるにも関わらず罪を被せられ処刑。)

 

この様に、機体は終わっているし、作戦自体の成功確率がほぼゼロと皆分かっている。

また、放火の話からも作戦自体への不満があった事が伺える。

放火された機体に乗る予定だった隊員はインタビューに対して、特別攻撃に指名された時、何故私なんだ。私が先に死ななければならないのだ。と思った。」と答えている。

また、海軍で最初に特攻隊の隊長を務めた関行男大尉も、作戦前に以下の様に漏らしている。

「報道班員、日本もおしまいだよ。僕のような優秀なパイロットを殺すなんて。僕なら体当たりせずとも、敵空母の飛行甲板に50番(500キロ爆弾)を命中させる自信がある。僕は天皇陛下のためとか、日本帝国のためとかで行くんじゃない。最愛のKA(海軍の隠語で妻)のために行くんだ。命令とあらば止むを得まい。日本が敗けたらKAがアメ公に強姦されるかもしれない。僕は彼女を護るために死ぬんだ。最愛の者のために死ぬ。どうだ。素晴らしいだろう。」

 

そりゃ無駄死になんてしたくはないよな。

米軍が大戦中に出していた内部向け報告書、それらを分析した本があり、そこに興味深い話が載っている。

日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書) | 一ノ瀬 俊也 |本 | 通販 | Amazon

日本兵靖国イデオロギー的な殉国意識は、教育レベルが高くなるにつれ弱くなる。

・降伏をしたり、捕虜になると皆殺しにされると信じている。

・上官の体罰を非常に恐れている。

・捕虜となるのは恥と思っており、そうなるともう自分の村では生きていけないと信じている。

日本兵は給与が安く、仕送りも出来なかった。留守家族の生活は政府ではなく、「ムラ」近隣社会の手にゆだねられており、自分だけが生き残った場合、「ムラ」は家族への農作業援助を打ち切る可能性があり、これが投降を拒否した最大の理由の一つである。

ああ、なるほど。と思った。

 

僕の想像だけど、大叔父さん達は多分、クソみたいな機体、根性論で立てられたクソみたいな作戦に不満ぷんぷんだが、戦争に負けたら殺されると信じ込まされているし、上司には反抗出来ないし、恥さらしとして地元に帰るわけにもいかないし、残してきた自分の家族の生活を守るため、死地に向かったんじゃないだろうか。

あの手紙も、親に心配かけない為に、自分の死を納得させる為に書いたんじゃないだろうか。

 

あ、なんだか、これ、デジャブだ。

 

戦略がそもそも間違ってるのにクソみたいな商品やサービスを根性論で売らされて、上司に反抗出来ず、休職や、転職しちゃうと負け組みたいで周りに恥ずかしいし、自分の選択肢は無いと信じ込んじゃって、生活もあるしと、好きでもない職場で好きでもない同僚と働いて、ずるずるとメンタルを疲弊させていくみたいな。

 

海外の人と話していて過労死の話題になり、「なんで会社辞めないの?」と純粋に聞いてくる彼らにその背景を説明するのに苦労した事があるけど、この辺りは非常に説明しづらい。

 

恥や、ムラ(組織)の為に死ぬという日本人のメンタリティは、70年以上前からあまり変わっていないという仮説が立ったけど、ここらへん最近ホットトピックなのでもし詳しいかた居たら教えてください。